坂の上の王様とお妃様 9

 私は、再び、あの超豪邸にやってきていた。約束通り、16時に。

 そして、王さんも。木崎さんが言ったとおり、屋敷でまっていてくれた。

 「やあ・・・」

 王さんは少し痩せたように見える。でも、目に宿る輝きは、先日の物と同じだった。

 「あの・・・」

 私は、通された屋敷のテラスで、なんとか声を絞り出す。

 「あの、こないだのことなんですが・・・」

 「ああ、返事・・・だな」

 「はい・・・」

 私は、こくんと頷いた。

 「私は、王さんが思うほど器用でもないし、美人でもない・・・でも王さんは、付き合ってほしいといいました。どうしてか聞かせてくれませんか?」

 王さんは、不思議そうな顔をした。でも、誠実に答えてくれた。

 「木崎は、確かに不器用で、何かをするのにも時間がかかる。強気でもないし、どちらかと言えば、人の影に隠れているタイプだ・・・」

 王さんに言われると、ちょっと傷つくな・・・私は真面目にショックだった。そんな私を知ってか知らずしてか、王さんは続ける。

 「だが、木崎はまっすぐで、純粋だ。この一週間、木崎の事が気になって、仕事にならなかった。木崎いない人生なんて、私には考えられない・・・」

 王さんは、堂々とそう言うと、

 「これが私の気持ちだ。木崎・・・君は?」

 王さんは、まっすぐ私の方を見つけてきた。

 私は、一瞬、ためらいそうになった。でも、ここまで来たんだからと、首を振って王さんをまるでにらみ返すかの様に、言葉を紡いだ。 

 「私も、この一週間、王さんとのことを真剣に考えてきたつもりです。」

 そして、一息深呼吸をした。頬が赤くなっていくのが分かる。

 「私、私は、どうしたらいいのかずっと迷っていました。」

 王さんの瞳が私をとらえて離さない。

 「でも、私・・・決めたんです。」

 私は、ゆっくりと歩きながら王さんに近づいた。

 「どんくさくても、地味でも、貧乏でもいいから、私がいいんだったら・・・私をあなたのお嫁さんにしてください。」

 王さんは、私を抱きしめた。それは、本当に一瞬の出来事であった。

 「本当にいいのか?木崎?!」

 「私、一度口にしたことを買えたことはありません・・・」

 「分かった。今日から君は、私の家族だ・・・」

 王さんは、さらに強く抱きしめると

 「今日は、美味しい料理を黒崎が用意してくれている。食べて言ってくれるかい?」

 と、優しくささやいた。 

 「はい。喜んで」

 私も王さんを強く抱きしめた。


 こうして、私と王さんは恋人同士となったのであった。

 

はぜみ's ストーリーズ

こんにちわ、ハゼミです。 このHPは、私はゼミの書く、短編小説や、長編小説が載っているものです。 お暇なときやいつもの世界から離れたい時など、隠れ家的に来てくださると嬉しいです。

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