坂の上の王様とお妃様 4
私が二人に連れてこられたのは、優しいブルーと白が基調のイングリッシュ様式の部屋であった。広さは、14畳ほどであろうか。庭にも面していて、明るいイメージの部屋である。部屋の中央にはテーブルがあり、沢山のお菓子やサンドウィッチがきれいに置かれていた。
私は、黒崎さんが勧める席へと座った。そして、黒崎さんは、手際よく、私と王さんのティーカップに紅茶を注ぐ。そして、用事を済ませると、王さんの後ろへと下がった。
「本日は、ダージリンをご用意させていっただきました」
とても良い香りが、辺りを包む。私も少しではあるが、気分が和らいだ。
「あの・・・」
私は、一呼吸置いてから、王さんに話しかけた。
「私、こんな凄いお茶かなんて初めてで・・・どこから手をつけていいのか・・・」
王さんは、ティーカップを持ちながら不思議そうに答えた。
「そんな物好きなのもをつまめばすむことだろう」
それもそうだ・・・
私は、紅茶を一口飲んでみた。
「美味しい・・・」
本当に今まで飲んだことのない味であった。
「ありがとうございます。」
黒崎さんが一礼する。
「王さんは、毎日こんな美味しい紅茶を飲んでいるんですか?」
「私が毎朝入れております」
黒崎さんは、にっこりと微笑んだ。
オホン。王さんが、咳払いをすると、黒崎さんの表情が少し硬くなった感じになった。
「木崎。」
王さんが急に真剣な声で話しかけてきた。私は、近くにあるクッキーを丁度手に取っていたところだった。
「そのなんだ、木崎。私の事をどう思っている?」
私は気さく気分でこう答えた。
「そうですね、王さんは、厳しいけれど、私に紅茶のことをいろいろ教えてくれますよね。凄くありがたいです。」
「それだけか?」
王さんはじっと、私を見ている。
「少し、優しいかなって・・・」
「そうか・・・木崎。」
王さんは、私の顔から目を話さずに、こう言ってきた。
「今日、この場を用意したのは他でもない。木崎、私と結婚を前提に付き合ってくれ」
ああ、そうなんだ・・・王さん。私と結婚を前提に・・・
私は、一瞬、思考回路が停止いた。えっと、なんて言ったけ、王さん・・・
「私は、この一月、木崎と会っているうちに、木崎と真剣に交際をしたいと考えている。お前はどうだ?」
えっと・・・私は、今お茶会に来ていて・・・
「私・・・」
そうそう、王さんとは15歳離れていて、王さんはこんな大邸宅の主で・・・
私は、急に、思考回路が復活した。
そうよ、私は、貧乏で、王さんは帝都財団の会長。年だって、こんなに離れているのに。王さんは何を考えているんだ
「冗談ですよね?」
「冗談に聞こえるか?」
・・・ごもっとも。この人が冗談なんて言えるタイプではないのは分かる。
「でも、私と王さんとでは、年の差が・・・
「このぐらいの年の差の夫婦なんて、そこらにでもいるぞ」
「あと、私は貧乏で・・・」
「今の仕事が好きなら、続けていればいい! 他にまだ何か不都合なことがあるか?」
「・・・無いです・・・」
私は、王さんに押されて、そういった。
「なら、話は早い。決まりだな・」
王さんは、商談成立と言わんばかりに、満足げにマカロンをほおばった。
「お二人様、おめでとうございます」
黒崎さんも、またにこやかに笑う。
私は、ひとりだけその場から取り残された気分になった。そして、そうしてもこの場から逃げ出したくなった。
「すみませんおトイレに行きたいのですが・・・」
王さんが、黒崎さんを見ると、黒崎さんはすぐに、綿心椅子を引いて、立たせてくれた。
「こちらでございます、どうぞ。」
黒崎さんは、部屋の扉を開けると、私を化粧室まで連れて行ってくれた。
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