坂の上の王様とお妃様 3

 そして、当日の日曜日。貧乏な私の、小さな努力など、評価されることなくやって来る物です。

 約束の14時に、私は、それはそれは小さな存在として、巨大な門の前で立っていた。

 子殿も頃から最近まで、この坂の上のお屋敷は、正直、あまり手入れがされておらず。よく『化け物屋敷』とうわさされたものだったが・・・

 流石に帝都財閥の会長が住むだけあって、すべてがきれいにリホームされていた。『お化け屋敷』は、『超高級豪邸』へと変貌していた。入り口にも警備員が常駐しており、キリリとして見える。

 私はその警備員の人に、名前を名乗ると、「少しお待ちくださいませ」と、言うなり、襟の脇に向かって、何かを話している。なにやら無線でやりとりをしているらしい。警備員は、「すぐに担当のものんが来ますので、お待ちください」と、一礼する。

 しばらくすると、門が開き、中からびしっと黒い執事の服を着た自分と同じくらいだろう年頃の男性が出てきた。

 「木崎様でございますね。私は黒崎ともします。以後、お見知りおきを。さあ、こちらへどうぞ」

 黒崎さんは、私とそれほど年が変わらないだろうに、優しく、私に競ってしてきた。どこかのテーマパークにでもやってきた気分だ。黒崎さんは、背も高く、180cmはあるだろうか・・・細身で、容姿端麗で・・・やはりこれだけのお屋敷には、こういう方が似合うのだろう。小市民はこういうのに慣れていないから、ドギマギしてしまう。

 「あ、はい。」

少々赤面し、照れながら私は返事をした。

 黒崎さんは、広い庭を通り、西洋風の建物の中へと私を連れて行った。建物の中は広く、明るいエントランスになっていて、まるでここが同じ町内の、しかもお隣さんには、とうてい思えないほど立派な物だった。素晴らしい装飾品で飾られている。本当にここが『お化け屋敷』などと呼ばれていたなんて・・・

 「さあこちらへどうぞ」

 エントランスには、左右二つの扉があり、黒崎さんは右側の扉を開けた。そこは、覆う説まであった。こちらも広くって、全体が白と淡いグリーンを基調とした気持ちのいい下手である。

 黒崎さんは、私にいすを勧めると、

 「こちらでお待ちくださいませ」

と、ソファーを進めてくれた。

 座り心地は、これまた調度品なのだろう。今まで座った中で一番座り心地のいいソファーだった。正直、困惑してきてしまった。灰色のさえないスーツと自分が、この部屋には不釣り合いなのだ。

 そんな私を見て、黒崎さんは不思議そうな表情を浮かべた。

 「旦那様から何もお聞きになっておられないのですか?」

 「何をですか?」

 私は焦って、答える。

 すると、黒崎さんは、クスリっと笑って、こう言ってきた。

 「今日は旦那様のプライベートな茶会でございます。もうすく旦那様が来られますので、それまでは、どうかお気軽にお待ちになってください。」

 そして、彼は、素早く私に紅茶を入れてくれた。

 「アールグレイでございます。」

 黒崎さんは、微笑むと同時に一礼をして、静かに応接間から出て行った。

 「アール・・・なんだってけ?」

 緊張して、紅茶なんかどうでも良かった。ただ、黒崎さんがいなくなったことは、正解であった。私は、一息つくと、紅茶を一口飲んだ。

 「うわ、これすごく美味しい・・・」

 思わず叫んだそのとき。突然ドアがバタンと開いた。王さんと、数人の人たちと友に現れたのだ。王さんが、なにやら指示を出していくうちに、その人たちは、だんだん人数が減っていく。最後に残ったのは、先ほどの黒崎さんだけとなった。

「またせたな、木崎」

「あ、いえ・・・」

 周りと調和のとれた人がそこに立っていた。そう、この屋敷の王様・・・

 王さんは、私の反対側のソファーに座った。

 「これからの今日のこれからの仕事は、一切ないから、安心してくれ。今日は良く来たな。」

 私がポカンとしていると、王さんは、少し苦虫をつぶすように笑った。

 「普段着でいいと言ったはずだが・・・」

 私の事などお見通しと言わんばかりに、王さんは、私をみつめた。なんだか何時も王さんではないみたいだ。

「さてと・・・」

 王さんがそう言うと、黒崎さんが一礼をした。

 「はい、お茶会の準備は出来ております。」

 王さんは、満足げにうなずくと、私を連れて、別の部屋に移動することになった。

 



はぜみ's ストーリーズ

こんにちわ、ハゼミです。 このHPは、私はゼミの書く、短編小説や、長編小説が載っているものです。 お暇なときやいつもの世界から離れたい時など、隠れ家的に来てくださると嬉しいです。

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