坂の上の近藤さん
坂の上の喫茶店。二人は向かい合って座っていた。会話も弾み、二人共ニコニコと笑っている。若いもんは、なんでも笑っていればいいってもんだよ。でも、ああいいうのは、些細なことですぐに喧嘩もするってもんだ・・・ほらきた!
ピピピピッ
彼のスマホの着信音。そこから、雲行きが怪しくなってきやがった。
彼は、わざとスマホに目をやらない。こういう時は、余計にまずいんだよ。
「見ればいいじゃん・・・」
彼女が、一変して冷たい態度にでる。
「いや、大したことじゃないから・・・」
・・・
二人の雰囲気は、見る見るうちに悪い感じになっていった。二つ後ろのボッックス席にいる俺でも、わかるくらい、空気がピリピリしてきた。
彼は、おもむろに
「ここ、出て映画でも見に行こうか?」
と、問いかけるが、彼女は、
「いいよ・・・映画なんて」
と会話もギクシャクし始める。
「あのさ、悪かったって。」
「別に、私、怒ってなんてないし」
「じゃあなんで、そんな言葉言うの?」
「別に・・・」
「何なんだよ、さっきっから!」
「だから、スマホ見ればいいじゃない!」
こんな会話を3回ほど繰り返すふたりの会話は、ラチがあかない。
・・・まったく、この頃の若いもんは、お互いを許すって音を知らないんだよな。
いつもの喫茶店で、アメリカンを楽しむ俺にしてみれば、どっちたっていい話の内容だ。
すると、彼女は、最終兵器を持ち出してきた。
「それ、こないだの女からのラインでしょ?!」
ああ、言っちゃったよ。
「だから、違うって行っているだろう!?」
「うそ、だったら、見ればいいじゃない。私、知っているんだから!!」
偽の中で怒号が聞こえるまで、二人は興奮し始めた。完全に我を忘れている。まあ、この喫茶店が、俺以外客はいないからな。完全な痴話喧嘩になってた。
彼女は突然、席を立つと、
「もういい。私帰る!」
と言って、そのままドアに向かっていった。カランコロンと、ドアが閉まる音がした。
「本当に、なんなんだよ~!」
彼は、髪をクシャりとすると、代金を払って彼女の後を追いかけていった。
「珠ちゃん、最悪の展開だったね~」
俺は笑いながら、テーブルを片付ける喫茶店のオーナーにそう言った。
「そうですね。でも、最近良く来てくれてたから。チョッと心配かな・・・」
珠ちゃんは、優しくそう言った。
俺は、少し冷めたアメリカンをズズズーっと飲み終えると、一息ついた。
俺から言わせれば、ああいう奴らは、長くは持たない。
「まあ、色恋沙汰はあんなもんさ。なあ、球ちゃん」
「もう、近藤さんたら・・・」
苦虫を噛むように、珠ちゃんは答える。
「そういえば、王ちゃん、そろそろ来るんじゃないの?」
俺はニヤニヤしながら、わざと言ってやった。
王ちゃんは、俺のコーヒーの飲み仲間で、珠ちゃんの彼氏だ。
「そうね、そろそろかな・・・?」
珠ちゃんも、まんざらでもなさそうに、ニコリと笑う。いいね~恋してるってい言う奴は。
「あんたらも、上手くいっているみたいだし、一安心てなもんだ。」
「やあね、近藤のおじさんったら。」
俺は、テーブルにお勘定をおくと、席を立った。
「あら?ゆっクリしていかないの・・・」
ドア越しに、そう言われて、俺はこう言った。
「見せ付けられるのはゴメンだし、母ちゃんに怒られちまうよ」
じゃあな。
と、俺は、手をヒラヒラさせて、店を出た。
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