ショートヘアー
彼女は、ある日突然髪を切ってきた。
それも、あれほど長くしていた髪をだ。
俺は、彼女の長い髪が好きだったし、女の子は、『髪を長くしている方がいい』と言う、持論を持っていた。
しかし、彼女は、バッサリと首筋にかかることもなく、耳まで露出するほど短く髪を切ってきたのである。
いわゆる、ベリーショートというやつだ。
「にあう?」
彼女は、嬉しそうに俺にそう聞いてきた。驚きを隠せない俺を面白がっているみたいにも見える。
「似合うけど・・・急にどうしたの?」
彼女はクスリっと笑って、髪に手を当てた
「長いの飽きちゃったから、思い切って切っちゃった。」
俺は、なんだか彼女の微笑みには、どこか毒があるように感じた。
しかし、そんなことは、感じ取られないように、話を続けることにした。
「それにしても、かなり切ったな。」
軽く50cmは、切っているだろう・・・。
「うん、季節がもう春だし、気分変えてみようかなと思って。それに、最近、あんまり変わったことなかったし・・・」
まるで、俺のことを見透かしているかのように、彼女は微笑む。
「ま、いいんじゃないか?」
俺も、そう言ってみせる。
しかし、改めて見てみると、長い髪が懐かしくなった来た。風に舞う彼女の髪の毛が、俺は好きだったからだ。
「どうせ、すぐに髪の毛伸びるから。」
それとは逆に、彼女の方はサバサバとして、気持ちがよさげである。
そして、
「今日は、どこに行こうか?」
といって、彼女が踵を返して歩き出した瞬間、俺は、先程までの考えを一変させてしまった。
振り向いた彼女の項は、顕に露出され、どこか大人っぽく感じたのだ。
思わず、ドキドキと、胸の鼓動が、早まった気がした。
そして、短いのも悪くないんじゃにかという気持ちに、いつの間にかなったいる自分に驚いた。
彼女が、
「何?」っと、振り返って来た。
俺は、複雑な思いを隠すように、
「何でもない」
と、短く答える。
そしていつものように、くしゃくしゃに可愛い笑顔で、俺に微笑んできた。先程までの毒づいた感じはもう、感じられなかった。
男って、単純なものだと、改めて俺は思った。
0コメント